晏弘銘尺八
□□□本稿は月刊邦楽情報誌「邦楽ジャーナル」2018年7月号(Vol.378)に掲載された工房紹介記事を、有限会社邦楽ジャーナルの許諾を得てそのまま抜粋したものです。(邦楽ジャーナルに関する情報はこちら)「晏弘銘尺八」は100年以上の歴史を誇る。初代晏弘が「遠藤晏弘尺八工房」を創業したのは1912年(大正1)だ。丸定吉に製管を師事した。48年(昭和23)生まれの現三代目晏弘さんは大学卒業後、製管を二代目晏弘(父)に師事し、演奏は竹友社に入門して勉強した。三代目の三男鈴匠さんは81年(昭和56)生まれ。演奏の方は親戚である青木鈴翁・現青木鈴慕に、製管の方は大学卒業後父に師事し、現在、2人で尺八作りに勤しんでいる。鈴匠さんは師(鈴慕・晏弘)の許可を得て、「鈴匠銘尺八」を世に送り出している。
工房は練馬区のとしまえん遊園地から徒歩10分程の閑静な住宅街にある。
使用材は、本体・ホゾは関東近県・九州産の真竹、中継ぎ装飾材は籐・本漆・桜樺等、歌口は黒水牛の角という具合。
「材料はすべて自然素材にこだわって作っています。見えない所や音に関係がない部分にも手を加え、一見するとただ竹に孔を開けただけの単純な楽器に見えるように仕上げます。そのように見せることに日本人らしさがあり、そこから生まれる妙音が心に響くのだと思います」と晏弘さん。
様々な内径の尺八を作っていることもこの工房の特徴だ。「お客様の吹き方に合ったものや好きな音色で選んでいただいています。やわらかい音色、鋭い音色、綺麗な音色、様々ありますが、下地に砥の粉と本漆のみを使うことで、共通する尺八らしさが出ると思います。その分、作るのに手間が掛かりますが、割れにくく長持ちします」
自然素材にこだわるのは修理がし易いという理由もある。万が一中まで割れても重症になることが少なく、修理することで長く愛用してもらえるという。購入後5年間は割れや中継ぎの緩み等を無料で修理している。
(月刊邦楽情報誌「邦楽ジャーナル」2018年7月号(Vol.378)より)