ARTICLE 紹介記事

一城銘尺八

□□□本稿は月刊邦楽情報誌「邦楽ジャーナル」2018年6月号(Vol.377)に掲載された工房紹介記事を、有限会社邦楽ジャーナルの許諾を得てそのまま抜粋したものです。(邦楽ジャーナルに関する情報はこちら)

 

一城さんは1950年(昭和25)、兵庫県の現加東市に生まれた。青木鈴暮ファンだった一城さんは70年、関西学院大学理学部入学と同時に琴古流尺八をすべく、大学で教えていた荒木系の田中右童に習う。1年の夏休み、永廣真山に出した尺八の修理代が払えず、真山のもとで尺八の製造を手伝うことに。3年の秋、大学を中退してそのまま内弟子に。演奏の方は75年から憧れの二代目青木鈴暮に、夜行バスで東京に通うかたちで師事する。のちに鈴城の名をもらう。製管の方は12年間の修行時代を経て83年に真山から独立、吹田市の関西大学そばに自宅兼工房を構えて現在に至っている。

今、子息純平さんと2人で製作している。純平さんは1977年(昭和52)生まれ。6歳から宮城系の箏を習い、10歳から琴古流尺八を乳一城、米村鈴笙に学んだ。15歳で父と同じく二代目青木鈴暮に師事、大学も同じ関西学院大学(商学部卒)だ。27歳から一城銘尺八工房に入った。演奏は現在鈴純の名で活躍している。

「尺八の伝統を守りながらも現代に通じる楽器としての特性を探求していきたい」と一城さん。一番注意を払っている点を聞くと、「鳴りはもちろんですが、音色や響き、乙音から大甲音までの音の繋がり、メリの効き具合などあらゆる面から精査してバランスをとるようにしています」。永く愛着を持って息を入れてほしいと、「見栄えの良さも大切に、丁寧に仕上げるよう心掛けています」。

主に九州地方の竹を使っている。中継ぎの緩みなど製作者の責務による修理は基本的に無料。また、購入後の割れについても1年間は無料、それ以降は半額など購入者へのサービスがある。

(月刊邦楽情報誌邦楽ジャーナル2018年7月号(Vol.378)より)