ARTICLE 紹介記事

泉州銘尺八

□□□本稿は月刊邦楽情報誌「邦楽ジャーナル」2018年8月号(Vol.379)に掲載された工房紹介記事を、有限会社邦楽ジャーナルの許諾を得てそのまま抜粋したものです。(邦楽ジャーナルに関する情報はこちら)

 

札幌出身の三塚幸彦さんは「遠音」の演奏家として知られるところ。本誌でもエッセイ「尺八風紋」や講座「目から鱗の尺八上達法」の連載でおなじみだ。尺八製管のほうでも多くのプロに慕われている。自身がプロ演奏家であるがゆえ、その必要とする性能を常に追求してきたことが信頼を勝ち取った。

三塚さんは1954年(昭和29)生まれ。製管のきっかけは大学時代に遡るが、卒業後も仲間や知り合いからの注文が絶えないことから、母校専修大学にちなんで「泉州」を名乗るようになった。「プロの条件」「For The Professional」などのキャッチフレーズで本誌に尺八の研究をテーマにした記事風の宣伝広告を掲載、一躍全国区に。

泉州銘尺八でつとに知られるのは「オリジナルタイプ」。様々なメーカーの尺八の修理を積極的に引き受けたことで得られたデータを分析すると、長い年月をかけて非常に穏やかだが確実な変化があることを発見した。その変化を未来にまで延長して設計した尺八が「オリジナルタイプ」だ。工房ではそれを核に、現状のスタイルを踏襲した「スタンダードタイプ」、一世代前のスタイル「クラシックタイプ」など、タイプ別の尺八を送り出している。最近では「オリジナルBタイプ」が人気という。「オリジナルタイプは指孔が大きすぎる、3孔と4孔の間隔が広すぎる」という要望に応えたものだ。近々「カラカラ」ができる「クラシックタイプⅡ」を発表予定とか。

三塚さんは「音楽のための楽器であること。演奏家の表現のための道具であること」をモットーとする。現在、尺八の内部構造を数値化、数式化、単純化を試みて、3Dプリンタによる検証実験を行っている。8月6~12日に開かれる「泉州工房夏の尺八フェア」では3Dプリンタで再現した「オリジナルBタイプ」が出品される。

(月刊邦楽情報誌邦楽ジャーナル2018年8月号(Vol.379)より)